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直木賞の白石さん一問一答「嫌いだった直木賞、好きくらいは言いたい」(産経新聞)

 「ほからなぬ人へ」で第142回直木賞を受賞した白石一文さん(52)は14日夜、東京・丸の内の東京会館で記者会見し、喜びを語った。報道陣との一問一答は以下の通り。

 《白石さんはシャツの上に厚手のカーディガン、黒いジーンズ姿で登場した》

 ――今の率直な感想は

 「全然受賞できると思っていなかったので、非常にうれしかったです」

 ――お父さま(白石一郎)は8回目で受賞されましたが、初の親子受賞で感慨は

 「2回目(での受賞)なのですが、うちの父は相当忍耐力があったと思います。変な話、がまんをして…。やはり待っている間、緊張しますよね。それは体験してみないと分かりませんでした」

 ――お父さまは亡くなられているが、今回の受賞をどのように思われていると思うか

 「私も死にかけている人間ですが(笑)。父も鬼籍に入って随分たちます。父は僕が小説家になることに反対していたので、ちょっと一安心してくれたのかと思いますね」

 ――従来の作品は哲学的なものが多かったと思うのですが、受賞作は恋愛的な要素が多い。構想のきっかけは

 「どちらかというと僕は、批判されたとしても小説の枠組みを壊していく小説を書いていこうと思っていて、その前に小説らしい小説というか、みんなが楽しんでくれる要素をふんだんに盛り込んだ小説を書いてみようと思ったのです。僕の場合、小説ではなく『大説』といわれることもあり、僕の意見を言うために小説を書いていると批判されることもありますが、あながち外れていない。ただ今回は、ある程度読者の方が楽しんでくれるような小説を書こうと思って書きました」

 ――以前、幼いころは直木賞は嫌いだったと仰っておられたが

 「僕がほんの小さいときですが、今日みたいに、(父とともに)小さな団地で発表を待つわけですね。そのころから直木賞という賞は大衆小説を書く人間の登竜門で、非常に重要な賞でした。それでさんざん落ちるところを見てきましたから。なければいいのにとすら思っていましたね(会場笑)」

 ――直木賞のことは今でも嫌いか

 「こうなってしまったら、当然変わらざるを得ないですよね(会場笑)。大好きとはいえなくても、好きくらいはいいたいですよね」

 ――次回作以降はどんな方向性で描きたいか

 「大きい賞を幸いいただいたので、次回を考える前に少し時間をおいて、自分が今後どういうものを書けるのか、1年くらいは考えていきたいですね。書くということは出力作業で、出しているときはなかなか入れづらい。読んできたものをはき出しながらやっているんですね。まずはそのどういうことが書けるかということを考えたいですね。そのために今回の賞が利用できるのであれば、僕にとって一番うれしい。いろんなジャンルのものにもう一度好奇心を持って読んでいきたいですね」

 ――40歳くらいのころに病気をされていますが、創作に与えた影響は

 「決定的だったと思います。もともと僕は皆さんと同じで、取材を中心とした編集作業をしていました。それが病気をしたことで、消えて亡くなるような思いをして、自分を失いかけました。自分を再構成したり取り戻したりするのに時間を使いましたね」

 ――書くことに関してお父さんから学んだことは

 「書かないと父は生きていけなかったんだと思います。ガンでなくなりましたが、最後まで書こうとしていました。僕はそういう人間になりたくなかったし、父もそうしたくなかったと思う。ちゃんとした勤め人の暮らしをまっとうしたいと心から思っていましたが、それができなかった。きちんとした勤め人の生活ができなかったというところから、書く以外にはやれることがないと改めて思いますね」

 ――もしお父さんが受賞を知ったら何と声をかけるか

 「早かったな、というんじゃないでしょうかね(笑)」

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